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再生医療勤務から青パパイア作りへ。「“予防医療”の可能性を感じた」【パパイア王子】

一般的な食材と比較して栄養価が非常に高い“スーパーフード”に注目が集まる。チアシードやキヌア、アサイーなどが有名どころではあるが、一般社団法人日本スーパーフード協会による「2022食のトレンド予測 スーパーフードランキング」で1位に輝いたのが”酵素の王様”とも呼ばれるグリーンパパイアである。そんなグリーンパパイアを「宮崎県の特産品にしたい」と奮闘する“パパイア王子”こと岩本脩成さんに、グリーンパパイアの魅力や今後の展望などについてお話を伺った。

再生医療の研究職から“パパイア王子”へ

現在30歳の岩本さんは、大学時代にiPS細胞などの再生医療について勉強し、卒業後は再生医療の研究開発を行う会社で働いていたという、今の職業からは想像もつかないバックグラウンドを持つ。

そんな岩本さんが宮崎にUターンしたのは2019年のこと。地域おこし協力隊員として故郷の地に戻り、始めたのがグリーンパパイアの栽培なのだ。

「Uターンする前の話ですが、グリーンパパイアを使って加工品を作っていたおじいさんとおばあさんに出会ったんです。その時はまだなんとなく『体によい食べ物』というイメージでした。でも実際にグリーンパパイアを食べて体の調子が良くなった人の話も聞きましたし、自分でもグリーンパパイアを食べたり調べたりしていく中で、病気を未然に防ぐ『予防医療』の可能性を感じたんです。酵素の含有量はフルーツとして食べられる完熟パパイアの約10倍もあるんですよ」

グリーンパパイアと健康づくりの可能性を力強く話す岩本さんの声には、並々ならぬ情熱が感じられる。その可能性は見出すことはできても、実行に移せる人はなかなかいない。もちろん岩本さんも農業の経験は皆無。だが、そこで諦めなかったのが岩本さんだった。一人でできないならば、プロに学ぼう——そう思った岩本さんは、「若者と一緒に町を盛り上げたい」という地元農家の方々の力を借りながらゼロからグリーンパパイアの栽培をスタートした。

「農業について何も知らなかった私に手取り足取り、農業のいろはを教えてくださった皆さんがいなければ今の自分はいないと思います。グリーンパパイアを食べて一人でも多くの人に健康になってもらえることが農家さんたちへの恩返しになるし、何より嬉しいことです」

もちろん農家さんだけではなく、地域住民とのコミュニケーションも大切にしている岩本さん。実のところ、岩本さんを“パパイア王子”と名付けてくれたのは野菜発送の仕事をしていたパートの方たちなんだそう。いかに岩本さんが地元の方々に受け入れられ、愛されているかが分かるエピソードだ。

スムージーやドレッシング、スイーツとしても楽しめる万能野菜

まだまだ見慣れないグリーンパパイアという食材に、どのように食べていいのか、クセはあるのか、と勘繰ってしまう人がいる中、さすが“パパイア王子”の名を冠する岩本さんは栽培のみならず、そのおいしさを引き出すための商品開発にとことん力を入れている。

そして、意外にも酵素スムージーやドレッシング、カレーといった、おかずになるような食べ方を提案。おまけに最近では、紅茶や焼酎などで割って楽しめる酵素シロップも販売しているというから、その活用の幅に驚かされる。

「『どう料理していいか分からない』という方が結構多いのですが、実はグリーンパパイアはクセが少なく淡白な野菜なので使い勝手がいいんです。野菜炒めに使ったり、サラダにしたり、漬け物にしてもおいしいですね」

その万能さに大きな可能性を見出した岩本さんのグリーンパパイア商品は、飲食だけにとどまらない。なんと消毒用のアルコールミストや石鹸まで開発しているのだ。

無農薬栽培で育てたグリーンパパイアのエキスを使用し、人の肌に優しい商品を目指す。医療関連の仕事をしていた岩本さんだからこそ、単に食べるだけでなく、あらゆる視点から「グリーンパパイアで健康を」というアプローチができるのかもしれない。

グリーンパパイアにふれるきっかけを作りたい。料理教室や食育活動も

「体験しなければ、未知なものの魅力に気づくことはできない」と、料理教室やイベントへの出店などにも積極的だ。

「活動を通して、少しずつグリーンパパイアを食べてくれる人が増えていると実感しています。何度もイベントに顔を出してくださる方もいたり、中には実際に作ってみたレシピを提供してくださる方もいたりするんです。食を通して人と人が繋がっていく素晴らしさを、グリーンパパイアに出会ったからこそ気づくことができました」

岩本さんは続けて、「予防医療として体によい食べ物という認識も広めたい」と力説する。冒頭で紹介した岩本さんのバックグラウンドも含め、なぜここまで医療というものにこだわるのか。それは、岩本さん自身が幼い頃に腎臓の病気を患ったという経験が、その発想の出発点となっている。「少しでも病気で苦しむ人を減らしたい」という精神が日々の活動の原動力なのだ。

そのためにも、小さい頃からグリーンパパイアにふれてもらえるよう、食育という面にも力を入れている。

給食の献立では、なんと味噌汁の具材に使われることもあるのだそう。おまけに、子どもたちからも「おいしい!」という声がたくさん届いているというから、岩本さんの活動がしっかりと形になっていることを実感させられる。

「とにかく一度、グリーンパパイアを食べてほしい。そのきっかけを作りたいと思っています。子どもたちが歳を重ねて大人になるころには食卓にグリーンパパイアを使った料理が当たり前に出ていて、次の世代へと伝わっていく。そんな未来図を頭の中で描くだけでワクワクします」

マンゴーや地鶏だけじゃない。グリーンパパイアを宮崎の特産品に

最後に、「農業の高齢化が進む中で、若者が頑張っている姿を見てほしい」と岩本さんは力強く話す。

「グリーンパパイアは、他の野菜と比べてグリーンパパイアは比較的手の掛からない野菜なんです。農業に興味がある若者はもちろん、高齢の方でも育てやすく、もっと生産者が増えてほしいという思いがあります。いずれは、『宮崎といえばグリーンパパイアだ』と全国的に知られる特産に羽ばたかせたいです」

特産品のイメージはある程度固まりがちで、宮崎で言えば「地鶏」や「マンゴー」が思い浮かぶだろう。もちろんそれらを特産品にするまでにはそれぞれの農家の方々の並々ならぬ努力があったわけだが、新しい特産品を作るには、生産量を増やすだけでなく、認知度の向上、ブランド化、PRなど、あらゆるベクトルで力を注ぐ必要がある。

そうした課題に“パパイア王子”として岩本さん自身が矢面に立つ覚悟を持って挑み続ける限り、「宮崎といえばパパイア」の方程式が成り立つ未来はやってくるだろう。岩本さんの熱意からそう思わざるを得ない。

Photo:恒吉浩之(インタビューカット)、岩本脩成(その他)

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