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結城紬をリメイクし身近なものに!「もったいない」から生まれた「つむつむ〜小山de紬〜」プロジェクト

真綿を使う高級絹織物の結城紬(ゆうきつむぎ)。結城紬は、栃木県小山市や茨城県結城市を中心に織られている、真綿を使った高級絹織物の結城紬。伝統工芸品であるにも関わらず、地元でも結城紬のことを知らない人が多く、目にする機会はほとんどない。

結城紬をより身近なものにしたい。そんな思いから立ち上がったのが、結城紬をリメイクして普段着として活用する「つむつむ〜小山 de 紬〜」プロジェクトだ。

「結城紬をもっと身近なものに……」と考える、代表の村田玲子さん。「つむつむ〜小山 de 紬〜」プロジェクトの始動のきっかけや想いを語ってもらった。

結城紬とは?「もったいない」現状

栃木県小山市が誇る結城紬は、江戸時代に流行した高級絹織物。1977年に国の伝統的工芸品、2010年には「本場結城紬」の名でユネスコ無形文化遺産に登録されている。

結城紬はとても高級な織物で、古い着物や反物でも100万円以上の価値のものもある。20以上の制作工程をすべて手作業で行い、織り上がるまで長い年月がかかることがその所以。特徴は、軽さと暖かさ、そして、しなやかな風合いである。着るほどに味わいが生まれる、まさに一生モノの着物だ。

しかし、残念ながら、結城紬が小山市の伝統工芸品であることは、地元市民にもあまり知られていないのが現状だ。

「今の時代は着物を着る機会が少なくなった。昔、おばあちゃんが着ていた結城紬の着物が、何十年もタンスに眠っている。汚れや傷みがある、丈があわない……などの理由もあり、もう誰も着てないという話もよく耳にする。さらに、小山市にはこれほど素晴らしい伝統工芸品の結城紬があるのに、地元市民にすらあまり知られていないのは悲しい」(村田さん)

古くなった結城紬が使われずにタンスに眠っていること、さらに、伝統工芸品である結城紬が地元市民にも知られていない現状に「もったいない」を感じた村田さん。結城紬の魅力を知ってもらうべく、普段着へとリメイクするプロジェクト「つむつむ〜小山 de 紬〜」を立ち上げた。

「つむつむ〜小山 de 紬〜」の代表・村田玲子さんの想い

「つむつむ〜小山 de 紬〜」は、栃木県小山市の伝統工芸品である結城紬を、普段着へリメイクするプロジェクトだ。

タンスに眠ったままの結城紬の着物や、古くなり生地が傷んでしまった結城紬の反物や着物。使われていない着物や傷んでいる結城紬に、リメイクという形でもう一度息を吹き込むのが「つむつむ〜小山 de 紬〜」プロジェクトである。

日常から遠い存在になりやすい着物をより身近に感じられるように、小物やアクセサリー、スカートなど普段使いできるアイテムへとリメイクする。

「つむつむ〜小山 de 紬〜」の「つむつむ」は、声に出したときに響きがいい言葉だ。このネーミングにも、村田さんのこだわりが詰まっている。つむつむと「つむ」を繰り返す音がリサイクルをイメージさせる音の繰り返しになっており、「つむ」と「積む」をかけて「積む積む」と経験を積み成長することへの願いも込められている。

さらに、口ずさむだけで気持ちが明るくなる語呂の良さも名前の決め手となった。

「ポーチやスカート、リボンバレッタなど身近に感じられるアイテムへリメイクすることで、手にとってくれた人が『つむつむ』だけでなく、着物や結城紬そのものに興味を持ってくれたら嬉しい。伝統を受け継いでいきたいので、着物を着たことがない人や、そもそも結城紬を知らない若い世代に届けたい」(村田玲子さん)

「つむつむ〜小山 de 紬〜」プロジェクトを通して

「つむつむ」のラインナップは、スカートやリボンバレッタ、ポーチやコースター、子ども用のリボンなど。2千円から購入可能な比較的リーズナブルなものもある。また、オーダーメイドの相談も受け付けている。


上記写真で村田さんが身にまとっているスカートも、結城紬をリメイクしたものだ。

ポーチやリボンバレッタなどのつむつむの商品を実際に手にとった人からは、結城紬の上品な渋みとかわいさが調和した風合いがとても好評だ。来客用に「つむつむ」のコースターを使えば話題のきっかけにもなると喜ばれている。

ポーチのふさの部分には、結城紬を製造する工程から出る端糸が使われている。今までは不要とされていたものを積極的に活用しているのだ。ちなみに桜型のチャームは、小山市のシンボル「思川桜(おもいがわざくら)」を表している。

このような「もったいない」の発想から誕生した「つむつむ」。しかし、結城紬のリメイクには苦労も伴った。

「リメイクすることで、結城紬に携わっている作り手の想いや伝統を損なわないように気を配った。あくまで、傷んでいたり、着られない結城紬を『もったいない』の発想から再利用させてもらっている。形を変えることで伝統を軽く見ているわけではない。『つむつむ』は素晴らしい伝統工芸品の結城紬があってこそ。結城紬ならではの品の良さを損なわないために、丁寧なデザインや裁縫を心がけている」(村田さん)

村田さんが付けているリボンバレッタも、結城紬をリメイクしたものだ。渋さとかわいさを兼ね備えた上品さが特徴で、身につけることで味わいが深まる。

「『つむつむ』を通して人とのつながりが広がっていることも感じる。『つむつむ』が生まれたきっかけでもある『もったいない』の精神を大切にしたい。着る服や身につけるものを長く大切に使い続けることは、カーボンニュートラルにもつながる。丈夫な生地で作られているからこそ長持ちする『つむつむ』。いつまでも大切に使い続けてもらいたい」(村田さん)

「つむつむ」から着物や結城紬を知るきっかけを届けたい!

小山自慢株式会社の代表取締役を務める村田玲子さん。「つむつむ~小山de紬~」への熱い想いを伺うなかで、プロジェクト発想のきっかけとなった2つの「もったいない」に深く共感した。”知らないこと”のもったいない、”使われていないこと”のもったいないだ。

「つむつむ~小山de紬~」には、渋さとかわいさを兼ね備えた魅力がある。丈夫だから長く楽しめるのもいい。このプロジェクトをきっかけに、着物や結城紬を知る若い人も増えるだろう。

筆者も実際に「つむつむ」を手に取って、本場結城紬の伝統工芸に興味を持った。今後も「つむつむ~小山de紬~」プロジェクトが広がっていくとともに、着物の文化や伝統を若い世代へとつなぐ架け橋になっていくに違いない。

 

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