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「炙ることでさらに美味しくなった」、寿司として堪能する稲取金目鯛【魚八寿し】

伊豆半島東海岸の中央に位置する東伊豆町は、豊かな海の幸に恵まれている。東伊豆町の名産品「稲取キンメ(稲取金目鯛)」は、ブランド金目鯛として全国に多くのファンがいる最上級品だ。金目鯛は煮付けにして食べるイメージが強いが、東伊豆町稲取で金目鯛の握り寿司が評判の名店を発見。稲取キンメの美味しさの秘訣を辿りながら、新感覚の金目鯛の握り寿司を味わおう。

知る人ぞ知る東伊豆町「稲取キンメ」

金目鯛といえば、全国の漁獲量のうち約8割近くを伊豆半島周辺が占めている。特に東伊豆町稲取の金目鯛漁業の歴史は明治時代にまで遡り、現在も立縄釣り(一本釣り)の漁獲量は県内1位を誇る。

ブランド魚「稲取キンメ」は、東伊豆町稲取漁港で水揚げされた一本釣りの金目鯛だ。網どりの魚と比べて、一本釣りで漁獲された魚は見た目の美しさや味わいが格段に上がる。網どりの魚はたくさんの魚を一気に引き上げるため、ほかの魚や網との間に摩擦が生じ、魚の身が傷つきやすい。魚に与えるストレスも大きく、鮮度が落ちる。

一本釣りは一度に釣り上げられる量が限られ、熟練したテクニックも必要だ。それゆえに、一本釣りされた金目鯛は鮮度が高く質も良い。

さらに、稲取キンメは日戻り漁で釣り上げられた魚だ。日戻り漁の船は、日の出から操業して日の入りまでには入港する。船上では魚を水氷保存して品質を保ち、その日のうちに市場に出す鮮度維持への徹底ぶり。ついさっきまで稲取漁港を泳いでいた金目鯛が、新鮮な状態で地元の料理店に並ぶ。

「金目鯛=煮付け」の常識を覆した稲取キンメの握り寿司

鮮度の良い金目鯛は、刺身にすると美しい桜色をしている。稲取キンメの刺身も、河津桜に負けないくらいの見事な桜色に輝く。金目鯛といえば煮付けにして食べるのがもっぱらだが、東伊豆町では金目鯛の刺身やにぎり寿司が評判だ。

JR稲取伊豆駅から海を目指して歩くこと数分。地元民からも愛される「魚八寿し」の暖簾が見えてくる。魚八寿しは、稲取キンメの握り寿司を日本で初めて出した店として有名だ。店主の村上博之さんに、金目鯛を握り寿司へと昇華させたきっかけを伺うと、返ってきたのはシンプルな理由だった。

「金目鯛は刺身にすると美味しいから、握りにしてみたら美味しかった。そこから進化して炙りにしてみたら、金目鯛が持つ脂の美味しさがさらに際立った」(魚八寿し店主村上さん)

村上さんの言う通り、表面を軽く炙った稲取キンメの握り寿司は、濃厚な旨味と甘味が舌の上でとろける絶品。大ぶりの稲取キンメを贅沢に使い、肉厚で食べ応えたっぷりなのもうれしい。

稲取唯一の寿司屋から見えてくる東伊豆の魅力

村上さんは毎日市場に足を運び、一本釣りされた新鮮な稲取キンメを選び抜く。目利きでは、稲取キンメの大きさを重視しているという。

「市場ではいろいろなサイズが出ているけど、うちで扱っているのは大きい稲取キンメ。大きければ大きいほど脂が乗っていて美味しいからね」(魚八寿し店主村上さん)

稲取キンメの握り寿司目当てに来店する客も、これだけの味とボリュームを楽しめるなら十分満足できることだろう。一番人気は、8貫の握りが並ぶ「金目寿し」(3630円)だ。メニューには「金目丼」や「金目の煮付け」なども並ぶ。

しかし意外にも、稲取キンメの握りをメニューに出した当初、人気はすぐには出なかったと言う。金目鯛は煮付けで食べるというイメージが強かったからだ。稲取キンメの握り寿司の人気が出始めたのは、今から二十年ほど前のことだった。

今ではテレビや雑誌などでも稲取キンメの握り寿司が取り上げられ、観光客がお店に行列を作るまでになった。魚八寿しは予約不可のため、店の外で稲取の潮風を感じながら席を待つ日もある。「来てくれたお客さんに振る舞えるように、前日から時間をかけて仕込みをしっかりしています」と、村上さん。

魚八寿しは初代が1990年代に創業して以来、地元民からの人気も高い。かつては稲取には10軒ほどの寿司屋があったが、現在は魚八寿しが唯一の寿司屋だという。

地元民は「おまかせ寿し」(並:3630円)など、地魚の握り寿司を出前で頼むことも多い。海の幸に恵まれた東伊豆町では、稲取キンメ以外の魚介類も美味しいのだ。

東伊豆町を訪れるなら、稲取キンメの握り寿司を楽しまない手はない。魚八寿しの稲取キンメの握りは、ふるさと納税を通して食事補助券も購入可能だ。稲取では稲取温泉や岩に囲まれた自然のプール「磯Sea Garden IKEJIRI」などアクティビティも体験できる。海に行きたくなったとき、美味しい魚を味わいたくなったとき、東伊豆町に足を運んでみてはいかがだろう。

(文:鈴木舞)

魚八寿し

静岡県賀茂郡東伊豆町稲取371-4

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