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1粒1,000円のライチを生んだ、地域商社「こゆ財団」が目指すコト【新富ライチ】

1粒1,000円の高級ライチが、宮崎県の中部に位置する新富町で生産されています。

このライチを「新富ライチ」としてブランド化し、ライチを起点にして新富町に多くの関係人口を生み出したのは、自治体発の地域商社である「こゆ財団」。

「世界一チャレンジしやすいまち」を目指す「こゆ財団」。一体どのような取り組みを行っているのでしょうか。本記事では1粒1,000円のライチ誕生のエピソードと共に迫っていきます。

1粒1,000円のライチ

「舌ではなく、脳に響くライチの感動体験」という哲学のもと、食べた瞬間の驚きと喜びを追求してつくられた「新富ライチ」。

中でも、1本の木からわずかしか収穫できない「プレミアムライチ」になると、糖度15度以上、サイズ50g以上。1玉1,000円になる高級ライチです。

ゴルフボールより一回りも大きく、皮をむいた瞬間に果汁があふれ出し、ライチ独特の芳醇で豊かな香りが広がります。その感動体験に「一度食べたら忘れられない」と、1粒1,000円という価格ながら完売が続いている高級ライチなのです。

新富ライチが誕生した背景には、森哲也さんという一人の農家の熱意と、当時新富町で立ち上がったばかりの地域商社「こゆ財団」の活躍がありました。

森哲也さんは、もともとは新富町の特産であった洋蘭を生産する農家でした。ライチの生産を始めたきっかけは父の泰男さん。当時、ライチの生産にチャレンジしていた父、泰男さんのライチを食べ、あまりのおいしさに衝撃を受けました。

熱帯・亜熱帯で栽培されているライチは、日本での栽培が困難な植物です。本格的にライチ栽培を始めた森さんでしたが、その道は失敗と苦難の連続。試行錯誤を重ね、自信を持ってお客様に提供できるライチを生産できるようになったのは、それから10年経ってからのことでした。

おいしいライチの生産に成功したものの、まだ希少で知名度も少なかった国産ライチ。1粒300円でもなかなか売れず、販路開拓に苦戦をしていました。そんなライチを全国に広めたのは、地域商社「こゆ財団」でした。

無名だったライチが一躍地域の特産品に

2017年、新富町で旧観光協会を法人化して地域商社「こゆ財団」が設立されました。

こゆ財団は新富町でライチを生産していた森さんと協力し、ライチのブランド化を行いました。従来にはなかった糖度とサイズの規定を設け、森さんのライチへの情熱が消費者に伝わるように工夫を進めていった結果、東京圏を中心に販路開拓に成功。新富ライチは高級スイーツ店でも使用され、全国から取材や視察が殺到するようになったのです。

また、ライチをきっかけに新富町を知った人が、実際に町まで足を運んだり、他の特産品を購入する動きも出てきました。この取り組みが評価され、2020年には「新富ライチ」がグッドデザイン賞を受賞しました。

新富町を「世界一チャレンジしやすいまち」に

こゆ財団が目指すのは、新富町を「世界一チャレンジしやすいまち」にすること。

起業したい、新しいことを始めたいと思う人が、失敗を恐れずにチャレンジできる環境を整えるため、こゆ財団は率先して数多くのチャレンジを続けてきました。

例えば、町の商店街に賑わいを取り戻す取り組み。人通りの少なくなってしまった商店街に、町の内外からさまざまな人が訪れる場として朝市を定期的に開催したり、空き店舗をリノベーションし、こゆ財団のオフィス兼コワーキングスペースとして開放しました。他にもUターンしてきた人がお店を開業したりと、次々とシャッターを開けていったのです。

また、都内のIT企業にスマート農業のフィールドワークの場として新富町を利用してもらえるよう何度も東京に足を運びました。

多くの人と会う中でよく聞こえてきたのが、「本当はチャレンジをしてみたいけれど迷っている」という声でした。それならば自分たちがその受け皿になろうと、2018年に地域で活躍したい人を対象にした人財育成塾「ローカルベンチャースクール」を開催しました。

ビジネスで地域課題の解決手法を学ぶこのスクールは、座学だけではなく実際に新富町に足を運んでフィールドワークも実施しました。4期に分けて開催したローカルベンチャースクールの参加者は80名近くにのぼり、そのうちの7名が新富町に移住して新しいチャレンジを始めることになったのです。

町に広がるチャレンジの連鎖

新富町のために奔走するこゆ財団や、新しくビジネスを始める移住者の姿は、町の人たちにも影響を与えていました。

60代の有機農家さんは、「俺もチャレンジしたい」と自慢の有機米を使用したおむすび専門店をオープンさせました。

他にも、牧場を経営している人が「牧場や牛乳について子どもたちに伝えたい」と修学旅行の受け入れ先に立候補し、実際に修学旅行で見学に来るようになったのです。

町の外から来た人も、町で暮らしてきた人も、さまざまな方が自分たちの立場でできることを始めています。

こゆ財団が目指す「世界一チャレンジしやすいまち」とは、「失敗したらどうするんだ?」ではなく「応援するよ」と言い合える文化がある町です。

率先してチャレンジを続けるこゆ財団によって、チャレンジしやすい土壌が育まれています。彼らの姿に勇気をもらい、一歩踏み出す人がこれからも増えていくことでしょう。

(文:小笠原華純)

▼お問い合わせ
一般財団法人こゆ地域づくり推進機構(略称:こゆ財団)
https://koyu.miyazaki.jp/

▼新富ライチ 商品概要
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