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毎日300個作り続ける「チーズまんじゅう」で、都城の魅力を全国に伝えたい【ケーキの店Taiki】

宮崎県の名産といえば、何を思い浮かべるだろうか。

マンゴー、鶏の炭火焼き、焼酎、宮崎牛……。これらに比べると認知度はまだ低いかもしれないが、「チーズまんじゅう」も宮崎の銘菓として好まれている。実際、宮崎県内にはチーズまんじゅうを販売する店が200軒以上もあるとされており、宮崎ブーゲンビリア空港の売店でもさまざまなメーカーのチーズまんじゅうが所狭しと並んでいる。

チーズまんじゅうとは、クッキー生地でクリームチーズを包んだもの。この商品を開業以来作り続けているケーキ屋が都城市にある。「ケーキの店 Taiki」だ。

提供:ケーキの店 Taiki

夫婦で営む地元密着のささやかな店だが、ふるさと納税の返礼品としてチーズまんじゅうやチーズケーキなどの商品を提供するようになったことをきっかけに、今では県外からの注文も増えている。コロナ禍でも忙しい日々は変わらない。

Taikiの菓子が多くの人々に愛されるわけとは何だろうか。その理由を探るべく、オーナーの栄福泰信さんに話を聞いた。

幅広い商品ラインナップを捨てる

Taiki は2001年10月にオープン。店名は栄福さん夫婦の息子の名前(大樹)からとっている。市の中心部である都城市役所のそばに8坪の店を構えるも、「最初は苦労しました。誰もこの店のことを知らないので、まずはそこからでした」と栄福さんは振り返る。

ただ、開業から半年ほど経ったころに発売したチーズケーキ(商品名は大樹のチーズ)や、本物の卵の殻を容器として使った「元気たまごぷりん」が好評を得たことで、地元での認知度が少しずつ高まった。さらに、世の中の景気も割と良かったこともあって、徐々に客足は伸びていった。

提供:ケーキの店 Taiki

2005年、多くのクルマが行き交う街道沿いの場所に店舗を移転。「さあ、ここから!」というタイミングで、リーマン・ショックや、栄福さん自身の体調不良などに見舞われ、売り上げが低迷した。また、当時はいわゆる“町のお菓子屋さん”として、ケーキだけでなく焼き菓子など数多くの商品を作っていたが、コンビニでも気軽にスイーツを買えるようになったため、方向転換を迫られていた時期でもあった。

「商品ラインアップを充実させるよりも、お店として柱になる商品に絞り込む必要があると思いました」

栄福さんは、チーズまんじゅう、チーズケーキ、そして元気たまごぷりんの3つをTaikiのメイン商品にすることに。まさに「選択と集中」で店の立て直しを図ったのだった。

ふるさとの味になったチーズケーキ

先述したように、チーズまんじゅうは開業時から販売していたものの、そこまで多くの数を作ってはいなかった。当初は5〜10個程度。販売も毎日ではなかった。しかも賞味期限は6日程度と短いため、基本的には店頭販売である。売れ残ると来客にサービスで提供していた。

「近所に幼稚園があって、そこに通う子どものお母さんたちなどに配ってね」

ただ、そうした取り組みが功を奏し、さまざまな人がTaikiのチーズまんじゅうを口にする機会が生まれ、認知が広がっていった。次第に、「これはおいしい」と言って、買っていく客も増えてきた。こんなにもニーズがあるのであればと、栄福さんのチーズまんじゅう作りにも熱が入った。

提供:ケーキの店 Taiki

現在は、1日に300個、多い日は500個も作る。すべて手作業だ。「朝から晩までずっとチーズまんじゅうを作っていますね。日課ですよ」と栄福さんはほほ笑む。

Taikiのチーズまんじゅうの特徴は、生地とチーズのサクサク感。特に焼きたてはその食感が際立つため、好んで買い求める常連客も少なくない。冷凍品も用意しており、こちらは県外など遠方からの注文がメインである。

もう一つの主力商品で、毎日30個焼き上げるチーズケーキは、フワフワとした口当たりが売りだという。また、チーズの濃厚さをしっかりと出しつつ、レモンの清涼感も強いことなどから、「チーズが食べられないというお客さんでも、『おたくのチーズケーキだけは大丈夫』だと言ってもらったこともあります」と栄福さんは嬉しそうに話す。

今では都城市の“ふるさとの味”にもなっていて、進学や就職などで地元を離れた子どもに親が送ることも多いそうだ。あるいは、お歳暮やお中元など贈答品として県外に発送する客もいる。

提供:ケーキの店 Taiki

栄福さんがチーズケーキを商品化したのは、甘い菓子が苦手でもチーズケーキは好きだという人が多いし、お土産にもしやすいことが理由だったが、それが見事狙い通りになった。

今では、この2品で売り上げの9割を占める。ほかのケーキや菓子を作ってほしいという要望も時々来るが、いかんせん夫婦二人で切り盛りする店であるため、もうこれ以上、種類や生産量を増やすのは現実的ではないそうだ。

チーズまんじゅうをもっと県外に広めたい

都城市では知られた存在でも、域外ではまだ無名だったTaikiの潮目が変わり、全国区になったのは2016年。吉本興業グループが企画するプロジェクト「よしもと47シュフラン」において、チーズまんじゅうが金賞を受賞した。さらに17年にはチーズケーキが金賞に輝く。そこから一躍人気に火がつき、道の駅や空港などでも取り扱いが始まった。

時を同じくして、ふるさと納税の返礼品にもなり、拍車がかかった。「ふるさと納税への参加は、収益的なメリットはもちろんのこと、今まではほとんど接点がなかった市外や県外の新規顧客開拓にもつながっています」と栄福さんは喜ぶ。

今後の目標は、宮崎名物のチーズまんじゅうをもっと県外に広めること。宮崎県民にとってはソウルフードと呼べるものであっても、まだまだ全国的な認知度は低いと栄福さんは痛感する。これを変えていきたい。

そうした意欲があるのは、地元に対する強い思いもあるからだ。都城市で生まれ育った栄福さんは高校を卒業後、東京の大学へ進学。その時に喫茶店でアルバイトをしていたことから飲食店に興味を持った。その後、地元で評判のケーキ屋にUターン就職して、数年経つと再び東京で有名なパティスリーに働きに出た。

ずっと地元で暮らしていたわけではなく、外の世界も知るため、客観的に都城市を見ることができる。そんな栄福さんにとっての都城市は、肉や野菜などの食べ物がおいしく、どこかのんびりとした雰囲気のある住みやすい場所。この街を愛している。

「仕事などでたまに東京なんかに行くと、街はにぎやかだし、歩いているだけで新しい情報がどんどん入ってきてとても刺激的ですが、人が多くて疲れちゃう(笑)」と栄福さん。今の自分には都城市での暮らしが合っているようだ。

提供:ケーキの店 Taiki

地元のために貢献するなんて大きなことは言えないと栄福さんは謙遜するが、自分が作ったチーズまんじゅうや、チーズケーキを通じて、故郷・都城市のことも、もっと多くの人たちに知ってもらいたいと願っている。

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