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廃線を乗り越える!トロッコでまちを盛り上げたい【天空の駅】

島根県の中部に位置し、豊かな自然と農業を主産業とする邑南町(おおなんちょう)。広島県から島根県をつなぐJR三江線は、利用者数の減少や災害発生などを理由に、2018年3月31日に営業を中止、翌月4月1日に全線廃線となりました。

NPO法人江の川鐵道は、別名「天空の駅」と呼ばれる宇都井駅と、三江南線の終点だった口羽駅を中心に地域を盛り上げるため、廃線跡にトロッコ型車両を走らせています。

15人の鉄道ファンでNPOを結成

過疎化が続くなか、JR三江線の廃線によって一層厳しい状況が続く邑南町。地域を盛り上げるために立ち上がったのは、沿線の住民や三江線を愛する鉄道ファンたちでした。

「廃線になっても地域がなくなるわけではない!」を合い言葉に、廃線跡にトロッコを走らせる夢の実現を目指す、NPO法人江の川鐵道。

発起人は15人。夢はあってもお金はありません。各々が資金を持ち寄ったうえで、手ぬぐいなどのオリジナルグッズを販売し、売上を少しずつ集めていきました。その結果、ようやく1台のトロッコを買うことができたのです。

廃線から3年。NPOは会員120人の組織になり、実際にトロッコ運行を支援するボランティアスタッフも20人以上になりました。トロッコの運行だけでなく、JR三江線から見える絶景を動画で発信したり、イルミネーションイベントに合わせて運行したりするなど、歴史や魅力を伝える活動を続けています。

ファンとともに新しい車両を!ガバメントクラウドファンディングに挑戦

現在運行しているトロッコは乗車定員が少ないため、収入に限りがあり、長く事業を続けていく上での課題になっています。また、トロッコが満員で乗れないケースも増えてきました。

そこで、邑南町役場と連携し、ふるさと納税を活用したガバメントクラウドファンディングに挑戦! より多くの人にトロッコを楽しんでもらうため、新車両を整備することに。かつてJR三江線を走った車両のデザインの再現に挑戦しました。

ガバメントクラウドファンディングとは、自治体が実施する地域課題解決のためのクラウドファンディングです。支援者は「ふるさと納税」でプロジェクトを応援できます。

目標金額は800万円。大きな挑戦でしたが、邑南町との記者会見を実施し、チラシを地域内外に配布し、寄付の依頼をしていくなかで少しずつ応援が集まってきました。

中心となって活動した江の川鐡道の森田さんは、プロジェクトの仲間である支援者に対し、日々進捗と目標に近づいていくワクワクを共有。年末には11時間にわたるオンラインイベントを行い、支援者と活動を共有したり、JR三江線について語り明かしたりしました。

目標達成!感謝の気持ちを胸に、地域を盛り上げていく

地域内外から集まった支援者はじつに340名におよび、目標となる支援額800万円を達成しました。達成の瞬間、森田さんをはじめとする江の川鐵道のメンバーは、たまたま予定していた会合で喜びを分かち合ったといいます。

まさに340名の仲間で目標を達成した瞬間でした。

森田さんは、今回の取り組みをきっかけに、地域を訪れたり関わったりする人が増えてほしい、JR三江線跡地を維持・管理し続けるための仕組みをつくりたいと話します。

そして近い将来、宇都井駅から伊賀和志駅を経由して口羽駅までを走る約5kmに、この新しいトロッコを走らせる江の川鐵道の悲願を膨らませているのです。

340名の支援者とともに、夢の運行は続いていきます。

(文:佐近航)

▼参考リンク
NPO法人江の川鐵道
住所:島根県邑南町宇都井1041-1
https://gounokawa.com/

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