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“ゴミゼロ”から“暮らし”へシフト、上勝町が2030年までに目指すこと

環境意識の高まりで、近年ますます名前を聞くようになった徳島県の上勝町。人口およそ1500人の“四国一小さな町”。2003年に日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言し、2016年にはリサイクル率80%を達成した。2020年にはその目標年を迎え、2030年に向けた新しいゼロ・ウェイスト宣言を発表。それに伴い、今後どのようにゼロ・ウェイストタウンをつくっていくかの方針を示した「上勝町ゼロ・ウェイストタウン計画」が策定中だ。町の人びとはどんな未来を描いているのか? この実行委員のメンバーとして、また同町で「カフェ・ポールスター」を運営しながら町の暮らしを発信する東輝実さんのもとを訪ねた。

ゴミゼロだけじゃないゼロ・ウェイストとは?

5月、庭木の新緑が眩しいカフェ・ポールスターへ。入り口には「ハンカチ持参」のお願いと、様々なアイコンが描かれた7種のステッカーが目に入る。「ゼロ・ウェイスト認証制度です。全部で8種類の項目があります」と、東さんが迎えてくれた。

同町出身の東さんは、五感で上勝町を感じられる場所をテーマに、2013年にカフェをオープン。町内産の旬の野菜やつまもの(料理に添える木の葉や山菜など)を使った料理はもちろん、ハンカチ持参を意識したり、食べ物や環境に配慮したアイテムを量り売り・個包装なしで購入できたり、また掲示板に書かれた町のニュースなどを通じて、上勝の“ゼロ・ウェイストな暮らし”を体感できる。

オープンから9年、ほぼ毎日お店に立ってきた東さんだが、2022年からはお店に立つのは「週一程度」に。どんな変化があったのか。

「これまでゼロ・ウェイストを追求してきたなかで、今は“ゴミゼロだけじゃないゼロ・ウェイスト”が見えてきていて。ただごみを減らすだけではなく、より暮らしに焦点を当てたゼロ・ウェイストな活動をしていきたい。そうした思いで、時間の使い方を変えました」

東さんは2020年からはゼロ・ウェイストをベースとした上勝町滞在型プログラム「INOW(イノウ)プログラム」を共同運営し、2021年からは「上勝町ゼロ・ウェイスト計画」の計画書の策定にも携わっている。また運営するWEBマガジン「上勝暮らしカル」やインターネットラジオをはじめ、徳島新聞や阿波銀行主宰のWEBメディアなど、様々な媒体での原稿執筆や出演を行う。これまでお店に立っていた時間は、そうした活動に充てられている。全ての活動に共通するのは “暮らし”が軸になっていることだ。

町の収支を見える化。ゴミステーションのユニークな仕組み

2020年にオープンした複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」は、上勝町のゼロ・ウェイスト施策のアイコン的存在だ。ゴミステーションやホテルやリサイクルショップが一体となっており、町民はここへごみを持ち込み13品目45種に分別する。

面白いのは、ごみの種類ごとに町の収支が“見える化”されている点。例えば「割り箸・木竹製品/出/40円」と書かれているのは、これを処分するのに1kgあたり40円の支出が発生するという意味。対して「入」と書かれたものは、資源として価値があるもの。よって、その金額分が町の収入となる。支出になるのか収入になるのか、その金額も様々で、ごみを入れる際には気にならずにはいられない。

ゴミステーションの管理や普及啓発に務めるNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミーの事務局長を長年勤め、現在もゼロ・ウェイスト推進員として活動する藤井園苗さんはこう話す。

「ごみへの意識が変わると、買い物への意識も自然と変わってきます。包装資材の少ないものや資源として価値のあるものを優先的に選ぶようになってくる。するとどうでしょう。こうした消費者の動向を見て企業も、そして社会も変わっていきます」

常駐スタッフのサポートや、特定のごみを分別すると日用品等と交換できるポイントがたまるなどの楽しい仕掛けもあり、今では多分別もすっかり浸透しているが、こうした政策は近年始まったことでない。

1975年頃から同町では、自宅で処理できない不用品を処分するため、現ゴミステーションのある日比ヶ谷で大規模な野焼きが行われていた。野焼きは町の管理下で20年以上続いたが、ひどい悪臭と黒煙が終日立ち上る事態を受け、町がごみ政策に着手したのが1991年のことだ。

まずはコンポストや電動生ごみ処理機の購入の補助制度を設け、生ごみは家庭で処理してもらう仕組みを作った。廃棄物処理法改正で野焼きの禁止が定められたのを受け、1997年には「日比ヶ谷ゴミステーション」を開設し、9分別の資源回収を開始。その際に2基の小型焼却炉を導入するも、わずか3年で使用できなくなり、法規制や財政上の理由から「ごみをできるだけ燃やさないために多分別をする」という独自のごみ処理が始まった。燃やすごみを減らすために、リサイクルできる資源(ごみ)の引き取り先、それも条件の合うところをできる限り増やす。その結果、行き着いたのが現在の45分別というわけだ。

2030年に向けて。ゴミゼロから暮らしへシフト

こうした素地の上に、町が今計画しているのが上勝町ゼロ・ウェイストタウン計画だ。より一層ごみを減らしていくのかと思いきや、意外にもそこには「ゴミゼロというキーワードは出てこない」のだと東さんは話す。計画で大きく上げられているのは「企業連携」と「人材育成」、そして「住民の負担軽減」の3つ。なかでも喫緊で取り組んでいくというのが住民の負担軽減だという。

「現状としては、リサイクル率を含め消費者にできるレベルの限界に近づいていると考えています。ごみの分別数が多くて大変、車で持参するのが大変、といったことがアンケート調査でも明らかになっています。今後は最終処分場の視察などを通して、45分別は本当に適切か?検証を重ねていきます。また、ゴミステーションで分別するスタッフを増やす?回収車を走らせる?などという議論も段階的にしていく予定です」

企業連携としては、エイジングするプラスチックを共同開発したり、量り売りの実証実験や量り売りワークショップを共同開発するといったことが既に行われている。人材においても、上勝の暮らしやゼロ・ウェイスト の取り組みを体系的に学べる施設やプログラムを設ける議論が始まっている。こうした取り組みを考えるのにあたり、上勝のゼロ・ウェイストとは何か?を今改めて、町民が考える時期にきていると東さんは話す。

「上勝のゼロ・ウェイスト政策はもちろんごみを減らすことから始まりましたが、何のためにやってきたかというと、全てこの町の自然環境と暮らしを守り次世代に繋げるため、なんです。ゼロ・ウェイストは目的ではなく、目的のための手段でしかない。目指すべき本来の目的を、町民自らが見出す必要があると思います」

町人が自分で考え、発信することが必要

サステナビリティや循環型社会といった原点回帰が潮流になる今、世界のなかの上勝の立ち位置がますます注目されている。そこに対して、積極的に発信を続ける東さん。その根底には「自分たちで考え、自分たちで決めるコミュニティを築きたい」という思いがある。

「これまでメディアでの報道を通じて “上勝に答えがある”と思われてしまったり、ゴミゼロというキーワードだけが取り沙汰されることも多く、そこには違和感を感じてきました。今後は、当事者である町の人たちが何を求めて何が課題なのかを自分たちで考え、発信していく必要がありますし、それと呼応してくれるメディアや事業者さんとの連携を深めていければと思います」

2022年時点で、移住者は増えてはいるものの、高齢化による自然減のほうが依然と多い。人口増加や町の持続性は、変わらず町の最重要課題だ。上勝のゼロ・ウェイストが一人歩きすることなく、上勝の暮らしに漉き込まれた形で多くの人に届くこと。SDGsが流行語である今、そうした町内外の丁寧な対話がますます必要になるだろう。

写真 生津勝隆

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