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「何もない」から「しんじょう君の」まちへ。ご当地キャラが地域のファンを生む【高知県須崎市役所】

かつては「何もないまち」と言われていた高知県須崎市。しかし “ご当地キャラ”とふるさと納税の相乗効果によって、街は大きな変化を果たした。そんな須崎市の取り組みについて、詳しく追ってみよう。

※本記事は「ふるさとチョイスAWARD2018」時の内容となり、最新の状況と内容が異なる場合がございます。

ゆるキャラグランプリで日本一に

高知県の中部に位置し、太平洋に面した須崎市。リアス式海岸が生み出す絶景と、黒潮が流れ込む漁場を持つ魅力あふれる街だ。しかし街の知名度はなく、ふるさと納税総額も振るわず、PR方法が課題だった。

「街おこしは、情報発信、産業の転換、都市計画の3つだと思うんですが、情報発信なら小さなチームでもできるかなと。さらにキャラクターとして発信させれば、市の広報が発信するよりも、大きな力があるかなと思いました」

2018年のインタビューでそう語っていたのは、須崎市の元気創造課に所属していた(当時)守時健さん。この彼こそ、須崎市に大きな変革をもたらした人物である。守時さんは、高知県の出身ではなかったが、旅行で訪れた須崎市の自由でおおらかな雰囲気に惹かれ、市役所に就職。その3か月後に出した企画が、市のマスコットキャラクターである“しんじょう君”をご当地キャラとして再生させることだった。

須崎市の公式キャラクターであるしんじょう君は2013年に誕生。モチーフは、ニホンカワウソだ。現在は絶滅したニホンカワウソが最後に目撃されたのが須崎市の新荘川だったためだ。頭には須崎市名物の鍋焼きラーメンを模した帽子を被っていいて、カワウソの友達を探しに旅をしているという。

「5年後にゆるキャラグランプリで日本一を取ること」を目標に掲げ、ブログやSNSでしんじょう君の魅力を発信したり、イベントにも積極的にも参加した。

イベントでは、他の自治体のご当地キャラ担当者は元気に地元の良い所をPRする一方、守時さんは一見“やる気がなさそう”に見える紹介をしていたところ、イベント来場者の注目を浴びることになった。ゆるキャライベントで各地を回ることで疲れていたということがあったものの、守時さんなりの他のゆるキャラとは一線を画すための作戦のひとつでもあったという。

イベントやSNSでしんじょう君に出会い、ファンになる方は主に20~50代の女性たちだという。須崎市以外に住むファンの女性は、「しんじょう君を知ることにより須崎市が好きになり、ふるさと納税をしたり、年に1回は須崎市に足を運ぶようになり、さらに須崎市が大好きになった」と話す。まさに、しんじょう君効果により、須崎市の知名度、好感度が急速に上がっていったことが分かる。

しんじょう君のPRを始めた翌年の翌年の2016年には、目標通りにしんじょう君がゆるキャラグランプリで1位を獲得。2015年のふるさと納税総額は200万円ほどだったが、2016年にはおよそ6億円にものぼった。さらに2017年はおよそ10億円、20年度は21億円以上にまで達した。

しんじょう君が地域産業にも好影響

須崎市で漁業、農業を営む方々は、しんじょう君効果について、2018年当時はこう語っていた。

「ぶっちゃけ、最初はちょっとしんじょう君をバカにしていましたね。それこそ、今は足向けて寝られないです。(ご当地キャラが)こんなに大事なものなんだというのは、結果や成果が出て初めて知ったというのが本音です。ふるさと納税と関係を持つことによって、お客様に返礼品を直接届ける。お客様からの反響が直接、電話なり手紙なりが帰ってくる。それは我々にとって大きな財産になっていますね」

しんじょう君がきっかけとなり須崎市を知った人々は、須崎市で採れたもの、作られたものを口にしたり、足を運ぶことによりファンになって、さらなるふるさと納税への恩恵が生まれている。

しんじょう君から地方自治体の課題解決へ

守時さんは、地方自治体の課題について、2018年にこう語っていた。

「結局、キャラクターは情報発信のツールで、ふるさと納税も何かのツール。ツールの性能を常によくしていくというか、それを使って何をやるかが一番大事だと思っています。はっきりわかることは国内需要が減っていく、人口も減り続けるので、その対策を打たなきゃいけないということで、未来に投資することが一番大事かなと思っています。それが中学校や小学校の給食の無償化や、保育園の無償化に加えて、海外への投資っていうのは、分かりやすい未来への投資かなと思っています」

須崎市では、ふるさと納税を活用してアートイベントを開催したり、フランスのJapan Expoに参加するなど、若い世代に向けた施策や海外向けのPRも積極的に行ったり、須崎市の生徒が市の魅力をPRする活動支援にもふるさと納税が使われている。

2018年には、須崎市の“しんじょう君事業”がふるさとチョイスアワードのファイナリストに選ばれ、守時さんがこれまでのしんじょう君に関する取り組みについてプレゼン。大賞に選ばれた。当時のインタビューで守時さんは、ふるさと納税の成果についてこうコメントした。

「元気創造課やしんじょう君のチームを含めての成果だと思いますし、何よりファンに支えられてきたところがあるので、そういう意味ではチームとかファンというのが一番の成果なのかなと思いますね」

現在守時さんは、市の職員は退職しているが、今もしんじょう君や町おこしの活動を継続して、地域創生を広く伝えている。

しんじょう君とふるさと納税の組み合わせでまちの魅力を再認識させた須崎市。ファンの応援を受けながら、全国はもちろん世界へもその魅力を伝えている。今後もしんじょう君は、須崎市の魅力を伝え続けることだろう。

高知県須崎市

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