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「地域こそ最先端」人の掛け算が生まれる拠点・南房総ヤマナハウス【ヤマナハウス/永森 昌志】

千葉県南の房総半島に位置し、アクアラインを使えば東京からも1.5時間ほどで到着する千葉県南房総市。ここを拠点に、古民家を利用した里山づくりとそれらを取り巻くコミュニティ形成を行うのが永森 昌志(ながもり まさし)さんだ。

東京に生まれ、学生時代、社会人になっても東京暮らし、いわゆる“港区男子”も経験した永森さんは、南房総市にある里山体験が行える古民家を運営する代表だ。
当初は東京と千葉を行き来する生活を送っていた永森さんだが、地域に関わる中で、ついに移住までしてしまったという。

南房総に移住を決断

永森さんはもともと旅が好きだった。さまざまな地域へ行く中で、田舎暮らしをたのしむ人たちとの出会いや自然の豊かさに触れ、2拠点生活を始めてみることにした。それが今から14年ほど前。

東京を中心に千葉へ通うのが日常になりつつあったが、転機となったのは2015年。後に「ヤマナハウス」となる、3,000坪の面積に建てられた築300年の古民家と出会った。

「千葉にはもともと良く来ていたこともあってなじみもありました。東京は自分のルーツがある場所だし、仕事さえあれば繋がっていられる。ヤマナハウスを運営していく上で、千葉での時間を増やして東京をセカンドプレイスにした方が進めやすいと考えました。もしかしたら海外に行っていたかもしれないんですが、ある意味房総は、東京湾を渡った“海の外”です。」

こうして広大な土地と大きな古民家をDIYしながら、里山に拠点づくりを行う仲間を増やしていった。気づけば今では、関わってくれているメンバーが25人と膨れ上がった。主にDIYをしたい人たち、また食に関わるイベントや活動に多くの人たちが集まる。狩猟免許を持つメンバーは害獣であるイノシシを解体まで行う。そして横浜から通ってくるメンバーはバーベキューマスターで、それらジビエ肉を極上の料理に仕上げてくれる。

田舎暮らしを体験できる場所として、また、昔ながらの雰囲気を残す古民家という歴史的価値も認められ、今では企業研修やロケ撮影貸し出しなどに利用されている。

里山シェア「ヤマナハウス」の本当の役割とは

永森さんは千葉へ移住し、ヤマナハウスを運営してみて初めてわかったことがあるという。

それはここに関わる人たちは、自由にここで自分を表現しているのだということ、つまり、都会でできないことを自己実現する場所として、ヤマナハウスをうまく活用してくれているということ。ヤマナハウスは、集う人たちが自分のやりたいことを披露するためのステージであり、それらコトを通じて人と人とがつながり、人が人を呼び、作用しあう場所になっているというのだ。

都会との距離感は房総地域が人を呼び込むにあたっては、かなり有利に働いている。ふらっと来て、自然体の自分で過ごす貴重な時間をここで過ごし、そしてまた都会へと帰っていく。

「さっきまでジビエをさばいていたその日の夜、新宿を歩いているなんてこともできます。」

そんなライフスタイルを可能にするのは、首都圏からも遠くないこの場所なのだと改めて感じたという。そんなヤマナハウスを永森さんは、「“行きつけの田舎”のように使ってほしい」と考えている。

移住してから気づいた地域課題と地域資源を活用した新たな展開

ヤマナハウスを運営し自らも千葉に身を置くようになってから、地域が抱える様々な問題に気づいたという。

里山はどんどん減少し、耕作放棄地も増えている。廃墟のような空き家は、町を廃れた風景へと変えていった。千葉というと気づかれにくいが、特に房総地域においては高齢化や少子化も深刻だ。そこに追い打ちをかけたのが、3年前の台風15号だ。

助け合っていくこと、特に地域間コミュニティの大切さを痛感した永森さん。都会を見据えた房総暮らしではなく、地域に根差した活動を行っていく方向へと自然とシフトしていったという。

そこからまず取り掛かったのは、空き家再生。夕景と富士山ビュースポットとして有名な「原岡桟橋」近くの空き家を改装し、新たな拠点づくりを行っている真っ最中だ。ここ「ハラオカハウス」では一棟貸しのほか、ヤマナハウスと連携しジビエを使ったサンドイッチなどを提供する食堂を作ろうと考えている。

また台風の際、倒壊したビニールハウスの処理に苦労したことを教訓に、メンバーのひとりが発起人となって竹の骨で組むビニールハウスの組み立てワークショップを行った。放置竹林という地域課題に新たなアイデアを持ち込むことで挑戦していく一歩となった。

地域のポテンシャルを最大に生かすための“外の目”

現在永森さんは自治体と組み、ヤマナハウスを使って移住ツアーやお試し移住を行ったりもしてきた。

「最近思うのが、“最先端”という言葉。この房総こそが千葉の端っこなんですよ。ここでやることすべてが“最先端”なんじゃないか、なんて。」

そんな言葉が出ることこそが、ヤマナハウスでの充実した交流があるからこそなのだろう。

よそ者目線をしっかり持った永森さんの言葉を借りると、千葉にはわかりやすいアイコンがなく、それがニュートラルでなんでも受け入れてくれる気質につながるのだそうだ。なんでもできる、可能性がある場所だという印象が、房総の魅力につながっていると考えている。

ヤマナハウスもまだまだ進化の過程だ。みんなで作るのは“手前醤油”。田舎で楽しむ衣食住を積極的に行う。

今後、モンゴルゲルを建設する計画もある。

色んなアイデアや知恵を結集し、徐々に出来上がっていく拠点。

地域へのかかわり方が多様化する中で、田舎へのファーストコンタクトとしての役割も大きく担っているといえよう。

ヤマナハウス
千葉県南房総市山名1395
https://yamanahouse.site/

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