読むふるさとチョイス 地域の挑戦者を応援するメディア

「仕事後の夜間に受診も」錦江町の小児科オンライン【鹿児島県錦江町役場】

全国的に小児科医不足が叫ばれている中、鹿児島県錦江町ではふるさと納税を活用し、都市部の小児科医に遠隔で相談できる「小児科オンライン」を導入。子育て世代の願いを実現したその背景には、ふるさと納税に関わる人々の「想い」が込められていた。

※本記事は「ふるさとチョイスAWARD2020」時の内容となり、最新の状況と内容が異なる場合がございます。

返礼品の豪華さではなく、「想い」に共感

鹿児島県肝属郡(きもつきぐん)、大隅半島西部に位置する小さな町・錦江町(きんこうちょう)。町の大半は国見連山で占められ、壮大な神川大滝や、西日本最大級の照葉樹林地帯が広がる自然豊かな風土だ。「子どもたちがゆっくり過ごせるところが一番の魅力」と子育て世代は語る。

その一方で、人口は年々減少の一途をたどり、7千人弱(令和3年 総務省統計局 国勢調査)、国内の多くの自治体が頭を悩ませている少子高齢化が進む街でもあるのが現実だ。

そんな錦江町の理念は「子や孫のために希望あふれる『未来』を創り、つなぐ」こと。全国から街に集まった「ふるさと納税寄附金」の使い道については、住民が議論を重ねた上で、決定されている。

錦江町では、返礼品のお得感や豪華さで寄附金を集めるのではなく、寄附者が町の「取り組み」や事業者の「想い」に共感し、支援できる運用を目指している。それは、錦江町のふるさと納税に関わる人々の「絆」を深めるためでもあるという。

事業者・町民・寄附者それぞれの「想い」を直接町の力に変えるために、2017年8月1日から、すべてのふるさと納税業務を「錦江町地方創生総合戦略」の執行組織である錦江町まち・ひと・『MIRAI』創生協議会に委託。寄附者から寄せられた寄附金は、町役場の既存事業のみならず、町が抱えている過疎地由来の課題を解消するための新規事業に活用することにしている。そうすることで、寄附者との信頼関係が構築されることにもつながり、ふるさと納税制度以外でも町内事業者や町民の方々を「応援したい」と思えるような仕組みになっているのだ。

全国1700以上ある自治体の中から、錦江町を支援したいと思う人々の「想い」を町の力に変えるためにも、町内公募で集結した「百人委員会」と呼ばれる住民たちとともに、町の課題を考えながら4か月かけてふるさと納税寄附金を「誰のため、何のために使うべきか」をじっくり話し合い、その「使うべき対象」を条例化。寄付金を「使うべき対象」は以下のように定められている。

  • 子どもなど将来の社会の担い手の育成に関する事業
  • でんしろう奨学金に関する事業
  • 地域経済の活性化に関する事業
  • 高齢者や障害者が活躍できるまちづくりに関する事業
  • 移住・交流に関する事業

こうした取り決めがあることで、寄付金が誰のため・何のために使うべきかが明確化され、返礼品のない寄附でも、寄付者が安心して錦江町に寄附することができるというわけだ。(返礼品のある寄附も可能)

小児科医不在の不安…。オンラインで解消

「小児科オンライン」の実現も、毎年実施している「未来想像・創造コンテスト」で寄せられた住民等からの提案のひとつだった。子育て世代の願いを、町の未来のために解決したいという想いに、都市部の小児科医や多くの寄附者の共感を得て実現したのだ。

小児科専門医が不在の錦江町では、子育て世代の話によると、「(近隣の町の)小児科に行くとなると40~50分かかっていた。予約を取っても、2~3時間待ちが当たり前」といった状況だった。

小児科オンラインは、多くのクリニックが閉まる18時~22時の時間帯にスマートフォンで10分間、小児科を専門とする医師にリアルタイム相談が出来る遠隔健康医療相談サービスだ。自宅にいながらスマートフォンアプリ「LINE」(動画通話、メッセージチャット、音声通話)や、電話で小児科医に自宅での対応や、日頃の子育ての不安について相談することが可能。2016年のサービス開始以来、今では全国の自治体や都市部の法人向けに広がりを見せており、社会サービスや福利厚生、付帯サービスとして導入されている。

錦江町で小児科オンライン導入の実現に至った経緯はこうだ。

2017年度に錦江町で実施された「ふるさと納税の未来志向な使い方のアイデア」で、錦江町へ移住してきた子育て世代町民から「安心して子育てが出来るように小児科誘致や遠隔診療・相談が出来る仕組みを導入する」という提案が最優秀賞(19~39才の部)を受賞し、実証実験を行うことに。

小児科オンラインを運営する株式会社Kids Publicと共同で、2018年6月から小児に特化した遠隔健康医療相談サービスの導入実証実験を、錦江町在住の未就学児を育てる子育て世帯を調査対象者として1年間実施。この事業にかかる費用に、ふるさと納税寄附金を活用することにより、町民は無料でサービスを利用することが出来ることになったというわけだ。また、2019年1月からは、姉妹サービスとしてリリースされた「産婦人科オンライン」も併せて利用出来るようになり、2019年4月から、町はこれらのサービスを正式導入・運用することになった。

導入には錦江町の理念に共感し、全国から集結した事務局スタッフが奔走。小児科オンラインの小児科医には、子育て世代からの相談のみならず、子育て世代包括支援センターの運営にも携わってもらうことになり、小児科医不在の錦江町に大きな安心を与えた。

そうした経緯で錦江町に導入された小児科オンラインを無料で利用できるようになり、子育て世代からはこんな声が寄せられている。

「オンラインなら、自宅にいながら画像を送信などでき、的確な診察が受けられる。仕事を終えた夜間に受診できるのもメリット」

「夜間救急病院が鹿屋市にしかないので、夜の場合はそこに連れていくか、様子を見ていいかという不安の中で、小児科オンラインなら気軽に医師に相談できる」

他の自治体での導入も進む

こうしたふるさと納税の活用法は、新聞で取り上げられるなど注目を集め、2019年に行われた「第3回ふるさと納税自治体連合表彰」で全国の応募の中から「ふるさと納税を活用して地域活性化につなげた優れた取組事例」として選出され、表彰を受けた。

2020年のふるさとチョイスAWARDでも、ベストインベストメント賞を受賞。他の自治体での導入も次々に進んでいる。

見事に住民・医師・寄附者の「想い」をつないだ、ふるさと導入を活用した小児科オンライン導入。子どもたちの希望あふれる未来を創り、これからも錦江町で暮らす住民たちに安心感を与え続けるだろう。

(リンク先)
鹿児島県錦江町

TOPへ戻る