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届けているのは「感謝の気持ち」。ゆずの香り漂う村の挑戦【高知県馬路村役場】

新型コロナウイルスの感染拡大で揺れ動く日本列島で、医療や介護などの最前線で働く人たちに、これまで数え切れないほど助けられてきた。ワクチン接種がスタートするも出口の見えなかった2021年の春、高知県の馬路村では、多忙を極める医療機関の方々に感謝を伝えたいという声が広がっていた。

そんな村民の声をきっかけに、感謝のメッセージを添えたオリジナルデザインの特産品が誕生した。音頭をとったのは馬路村役場のルーキー西川哲人さんだった。

※本記事は「ふるさとチョイスAWARD2021」時の内容となり、最新の状況と内容が異なる場合がございます。

苦境から生まれた、感謝を伝える特産品

村内の事業所から村内や近隣町村の医療従事者約500名に対して贈られたのは、ゆずとはちみつドリンク「ごっくん馬路村」、「木のコースター」、「馬路温泉入浴券」。この日のために、「ありがとう」や「コロナに負けるな」などのメッセージを添えたオリジナルデザインの特産品が作成された。

「緊張状態に置かれている医療従事者の皆さんに、少しでも笑顔を届けることができてうれしく思います。日頃お世話になっている人、感謝を伝えたい人など、受け取った人たちが笑顔になれるものを、この村からこれからも作っていきたい」とは西川さんの言葉だ。

特産品と一緒に、「村の風」が届きますように

「今回の取り組みをきっかけに、馬路村の人たちの温かさが少しでも伝わるといいですね。感謝を届けることを、村の活性化につなげていきたいです」(西川さん)

医療従事者に特産物を通じて感謝を届けることで一躍注目を集めることになったが、「人を笑顔にする」という馬路村の取り組みは、今に始まったことではない。村の人にしてみれば特別なことをしているつもりもないかもしれない。それは、これまで馬路村と交流のある人ならばお察しの通り——

村では心の通った交流が日常的に行われているからである。

例えば、村からのお届け物にはこんな心躍る仕掛けがある。

  • 箱を開けた瞬間の感動を演出する荷造り

「お客様からご注文をいただくとひとつひとつていねいに商品を荷づくりしています。開けた時のワクワクや感動をお届けできるようクッション材をタオルにしたりと考えながら取り組んでいます。お客様によってご注文は違い、時にはひとつの荷づくりで小さな会議が開かれます。私たちの想いを一緒に込めてお届けします」(馬路村農協ウェブサイト/「ゆずの森加工場」見学より引用)

  • ほんの御礼の気持ちです

「馬路村を応援(ふるさと納税)してくれたお客様に、役場より毎年暑中お見舞いを出させてもらっています。村の風が届くようにと、馬路村の杉の間伐材から作られた木のうちわを同封していて、受け取ったお客様から「毎年うれしい贈り物をありがとうございます!遠くから応援しています」、「今年もぜひリピートしたいです」など嬉しい声をいただいています。こちらから御礼の気持ちを送っているはずが、逆に御礼の連絡をいただくことに感謝がやみません」(「ゆずの風新聞」令和4年秋の始まり号より引用)

医療従事者へ思いを伝えたいという行動は、いわば必然。村の人から声が上がり、その声を受けて役場の西川さんが行動を起こしたのも、それぞれの立場から相手を気遣い真心を込めるという村の暮らしで育まれてきたのだ。

ゆずのこと、馬路村のこと

ここで、医療従事者に送られた3つの品から村の暮らしを掘り下げてみよう。

  • 「ごっくん馬路村」は馬路村公式飲料。ゆずとはちみつと安田川の水だけでできている

「村の全ての農家が有機循環型農業でゆずづくりに取り組んでいます。村を歩いていると収穫時期には、村中からゆずのいい香りがするんです。春は山菜をとり、夏は鮎を釣り、秋はゆずを収穫し、冬はイノシシをおさえます。豊かな自然に囲まれて暮らす馬路村の村の人たちは、季節の移ろいと、ゆったりとした時間を感じながらゆずづくりに励んでいます」(西川さん)

  • 魚梁瀬杉の間伐材を用いた、美しい木目の「木のコースター」

「村の面積の96%が森林。森林の大半が県木にも指定されている魚梁瀬杉で、豊臣秀吉時代には神社仏閣の建立に使用されたといわれています。現在でも、県立自然公園内にある魚梁瀬地区の千本山には、樹齢300年を超す大木が林立しています。馬路村では『育てながら伐る』という考えのもと、百年先を見つめた森づくりによって、村の景観が守られています」(西川さん)

  • 村民に親しまれている美肌の湯「馬路温泉入浴券」

「村の唯一の憩いの場である馬路温泉は、収穫の疲れを癒すのにかかせない場所。夕方になると村民でにぎわいます。わずか1か月ちょっとしかないゆずの収穫作業は農家だけではとても間に合いません。子どもも収穫を手伝うのは当たり前。遠く離れて暮らす家族も週末に帰ってきて収穫を手伝います」(馬路村農協ウェブサイトより抜粋)

思い通りにいかない「自然」を相手にする暮らしは、となり近所と助け合うことで成り立っている。

新商品「ゆずリキュール」は、田舎の挑戦のカタチ

近年、馬路村から「ゆずリキュール」が誕生した。ドリンクやポン酢など、これまで様々な個性豊かなゆず関連商品を生み出してきた馬路村農協だったが、酒類を手がけるのは初めてだったという。

「畑違いではありますが、ゼロから皆でリキュールの勉強をして、『今までと違った顔を見せたいな』と夢見たモノが少しずつ形となり、とうとう馬路村だからこそ、ゆずの産地だからこそできるリキュールが完成しました」(「うまじむら新聞」2020年夏より引用)

モノづくりの原動力もまた、相手を思う気持ちだった。

馬路村の商品のファンは多い。品質もさることながら心遣いが嬉しいと言う。それが商品の真ん中に込められていることを受け手は気づいているのだ。人を動かすのは、やはり人の心なのかもしれない。

高知県馬路村

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