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地域は“官民一体”でもっと良くなる【沖縄・地域商社】ラクセスイノベーション

ローカルに根差す地域プレーヤー。そんなプレーヤーが複数集い、日々、魅力づくりに邁進しているのが「ふるさと地域商社」です。彼らのユニークな取り組みを紹介する連載をスタート。株式会社ラクセスイノベーションをご紹介します。

同社の執行役員兼営業部長・新垣司さんが目指すのは「人に喜んでありがとうと言われる仕事」。ラクセスイノベーションを立ち上げたのは、地域活性を目指す人々との繋がりがきっかけだったそう。

「私は企業に勤めていたとき、自営業もしていたんです。後にラクセスの役員になる照屋と佐藤と僕で、沖縄に貢献できる仕事を探していました。そのなかで、ふるさとチョイスさんを見つけて、ふるさと納税は面白くて地域に貢献できる制度で、皆がwin-winになれると思い、会社を作ることにしたんです」(新垣さん)

立ち上げメンバーと知り合いだったのが、代表取締役社長の赤嶺允也さん。最終的に5人のメンバーが集まり、ラクセスイノベーションを始動させた。

北部から広がった沖縄のふるさと納税支援事業

ITに詳しいメンバーがいたこともあり、ラクセスイノベーションは当初、ウェブ制作や動画の作成をメインの業態としていた。ところが会社を軌道に乗せるのは簡単ではなかったそう。

「そんなときに役員の照屋から『沖縄県のふるさと納税の現状を調べてみよう』と提案がありました。調べた結果、2014年当時は沖縄県全自治体でふるさと納税のことがほぼ認識されていなかったんです」(新垣さん)

「実際に各自治体を訪問して、聞き取りしました。どうしてふるさと納税に取り組んでいないかというと、『できないから』だったんです。人材がいない、仕組みがわからないという理由でした」(赤嶺さん)

ふるさと納税制度がスタートしたのは2008年。制度が広く認知されるようになったのは、2011年の東日本大震災がひとつのきっかけだった。それから2015年にワンストップ特例制度の導入が始まるが、制度への力の入れ具合は自治体でさまざまだ。

「沖縄の自治体は人手が少ないために『ふるさと納税制度を始めたら仕事が増えてしまう』というスタンスが多かったんです。それならば、『私たちがそこをカバーできるならやりますか』と新垣が積極的に提案して、一つの自治体と契約にまでこぎつけました」(赤嶺さん)

「契約できたのは、沖縄本島北部の大宜味村。私たちは事務所が那覇にあって沖縄の南側から動いていたんですが、全部断られてようやく北の端っこから(笑)」(新垣さん)

やっと掴んだチャンスには、大宜味村を超えて自治体を動かす可能性を秘めていた。

「隣の国頭村さんなどにも『大宜味村のふるさと納税事業がうまくいったらやってくれますか』と話を持ちかけたところ、『大宜味村で成功したらやるよ』と言ってもらっていたんです」(新垣さん)

現在は県内で15の自治体から事業を受託。各自治体のふるさと納税事業の大部分を担当し、返礼品の品質維持や事業者の意識向上に力を入れている。

「沖縄県の事業者さんは本当にいい加減(笑)。配送やクオリティがいい加減になってしまうと、手に取った人が喜べるものにならないのが問題です。クレームはいくらでも来ますので、事業者さんの意識を高く持っていかないと。良い方の加減まで持っていけたら大きく変わると思っていますので、制度の理解を徹底するようなシステムを構築して支援していきたいですね」(新垣さん)

寄付金の循環で地域をより幸せにする

ラクセスイノベーションが目指すのは、ふるさと納税寄付額増加のその先、地域への貢献だ。支援事業を始めてから数年経った頃、ある嬉しいお知らせが入ったという。

「支援事業を始めて2年程経ち、大宜味村の酒造業者さんと久々に会ったんです。その方が丁度お子さんが生まれたタイミングだったのですが、『大宜味村から初めて出産祝い金が出ましたよ。ふるさと納税で寄付が集まったから』と。僕たちの仕事が地域の役に立ったんだなと格別の想いでした。やっぱり地域の人が喜んでくれるのが一番最高です」(新垣さん)

年月をかけて続けてきた支援事業が、地域の幸せに繋がった瞬間だった。

「過疎地域では出産祝い金などの住民サービスがないこともあります。自治体さんには、寄付を集めたら使って還元しましょうということも伝えています」(新垣さん)

ラクセスイノベーションと沖縄市は、寄付金を活用した支援に取り組んだことも。

「コロナ下の頃、沖縄市から旅立った学生宛てに沖縄の特産品を箱詰めした支援物資セットを送りました。こうした動きがもっと必要なんですよね。最近もふるさとチョイスさんと自治体説明会を開いて、寄付金の使い道のセミナーをしました。寄付金活用を一時的な試みで終わらせず、継続してランニングさせることが正解かもしれない。そのためにも新しいプログラムやシステムを導入する必要があると感じています」(新垣さん)

沖縄の幸せを増やすため官民一体を目指す

ふるさと納税をさらに活用するためには、自治体との関係構築にも工夫が必要だと感じているそう。

「事業を始めて一番困ったことは、自治体さんの担当者が変わってしまうこと。自治体職員は異動がありますよね。ふるさと納税支援事業を始めたばかりの頃は、ようやく契約にこぎつけた自治体さんの担当者が変わってしまい、新しい担当者さんと『また一緒に考えましょう』となったり…。当時はふるさと納税事業を進めるのは本当に大変だと思いました」(新垣さん)

まだまだ発展途上にある沖縄のふるさと納税活用。地域のポテンシャルが高いだけに、事業推進の人材不足という課題も浮かび上がってきた。

「弊社では今よりも受託を増やして自治体に個別対応するのは難しくなってきました。沖縄の自治体には、弊社のような支援企業と事業者さんが協力できるような動きを取り入れてほしいですね」(新垣さん)

ふるさと納税制度活用を自治体に積極的に提案しているのは、沖縄の隅々にまで寄付が行き届いてほしいという願いがあるから。

「波照間島や渡嘉敷島のような離島では、寄付金が集まっても1000万円や2000万円程。返礼品の種類が少なかったりするので、どうやって寄付を集めたらいいのか考える必要があります」(新垣さん)

ラクセスイノベーションが次に目指すのは、集めた寄付金をいかにして地域に還元するか。地域商社として何ができるかを考えている。

「僕らが頑張って地域の魅力をアピールすることで、寄付者が増える。そこで雇用が生まれる。これがふるさと納税制度の魅力だと思っているんです。ふるさと納税を地方創生とミックスさせたものって、そこに行きつくんじゃないのかな。だから僕らができることは、地域の名産品を売るお手伝い、魅力を見せるお手伝いだと最近思っています。全てがそうだとは限らないのですが」(赤嶺さん)

「官民一体でふるさと納税に取り組めば、地域がもっと良くなると思うんです。寄付金を活用して産業を興したり工場地帯を作ったり、そうすることで地元の雇用を増やす。寄付金を使う目的を真摯に考えて動いてほしいですし、私たちも寄付金を地域のために使うサービスを考えたいですね」(新垣さん)

他にも、大宜味村産マンゴーのふるさと納税出品、観光系返礼品が持つ可能性などについて、新垣さんと赤嶺さんが『ふるさと納税地域商社会』で語ってくれた。

『ふるさと納税地域商社会』

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