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「数歩踏み出せば奈良の日常」地域と共生のライフスタイルホテル【MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS】

奈良を旅するなら地域に溶け込みたい。そんな人にぴったりなホテルがMIROKU 奈良だ。1000年を超える古都の伝統と現代の奈良の日常をどちらも味わえる。MIROKU 奈良は、“SHARING WITH LOCALS”がコンセプトのTHE SHARE HOTELSのひとつ。地域との共生を目指し、奈良の素材を活かした建築、地場の手仕事が随所に光るのも魅力だ。新感覚の旅を提案するライフスタイルホテル・MIROKU 奈良滞在の楽しみ方を、支配人の佐藤知也さんに教えてもらった。

奈良の魅力を凝縮したライフスタイルホテル

MIROKU 奈良(以下、MIROKU)に宿泊すると、奈良の1300年の歴史を感じられる。宿があるのは世界遺産興福寺のすぐそば。客室の窓から外を見渡すと、五重塔の絶景を望める。朝はカフェバーのテラスに陽光が差し込み、奈良らしい神秘的な景色を目にすることも(※興福寺の五重塔が臨める部屋は北側に面した客室限定。また、今後数年にわたる改修工事で仮囲いがされる予定)。

「テラスは東側にあるので、芝生が太陽に照らされるんです。ここには鹿もよくやってきます。奈良公園には角の生えた大きな鹿が多いのですが、こちらは一般の方は入れないスペースなので、大人しい小鹿やメスの鹿がたくさん来るんですよ」

鹿たちも心地よさそうに過ごすテラスを設計したのは、建築家の芦沢啓治氏率いる芦沢啓治建築設計事務所。宿泊客が奈良の街とMIROKUをシームレスに過ごせるよう、地域に馴染む開放的なデザインに仕上げた。

MIROKUではさらに、奈良出身の建築家にも設計を依頼。奈良の自然を身近に感じられる仕上がりに。

「佐野文彦さんという数寄屋大工などをしていた建築家が率いるFumihiko Sano Studioがデザインした空間は、木や石などの素材をそのまま生かして表現されています。MIROKUでは吉野杉の丸太をぼんと使い、エントランスや地下のラウンジに奈良の原始的な雰囲気を出していただきました。こうした建築も、地域との共生のひとつだと考えています」

外国人観光客からの人気も高い奈良。MIROKUに泊まると、歴史や伝統に触れられると評判だ。

「客室の畳なども喜ばれます。(フローリングも取り入れているので)純和風というかたちでもないところが、外国人観光客の方も過ごしやすいようです」

かつてはオフィスビルとして使われていた、築34年の地下1階地上4階建てのビルをリノベーション。至るところに奈良の魅力が散りばめられている。

「MIROKUは奈良の素材にこだわって作られました。たとえばレストランの照明は、宇陀の手すきで作られた宇陀紙です。館内案内のQRコードを読み込んでいただくと、そうしたバックグラウンドもご覧いただけます。スタッフとの会話を通して知ってもらえるのも嬉しいですね」

MIROKUは、京都や広島など各地にホテルを擁するTHE SHARE HOTELSグループのひとつ。地域との共生を目指すTHE SHARE HOTELSのユニークな魅力を聞いてみた。

「私たちはライフスタイルホテルと呼んでいまして、暮らすように泊まるホテルを提案しています」

旅といえば非日常の刺激が醍醐味だが、心が和む瞬間も大切。日中に奈良の街や観光スポットを堪能した後は、MIROKUに帰りほっとひと息できる。

「カフェバーで、大和ほうじ茶のお茶漬けや三輪のにゅうめんを締めとして楽しむのもおすすめですよ。朝食は和洋2種類をご用意しています。カフェバーのメニューは奈良で人気のカフェ『くるみの木』に監修してもらい、地域の食材をふんだんに取り入れています」

スタッフの個性を育て、地域の魅力を引き出す

京都府城陽市出身の佐藤さんの前職は銀行員。高校生のときから銀行で働くことを目標にしていたそう。

「大学は滋賀に行き、地域に貢献する仕事に就きたいと考えて銀行に就職しました。地域の繁栄のために何が必要かというと、金融だと思うんですね。お金の流れを作るところにすごく魅力を感じたんです。法人営業では、個人の小さなお店などを回ってお話をお伺いし、困っているところをお助けするのが仕事でした」

「銀行の仕事は非常に充実していたんですけども、営業でいろいろな人の話を取り入れていく中で、地域の方にもっと身近に携わりたいと思ったんです」

5年ほど働いた銀行を退職し、THE SHARE HOTELSを手がけるリビタと出会う。

「丁度、RAKURO 京都(THE SHARE HOTELSのひとつ)を作るタイミングで、オープニングスタッフの募集が出ていました。私は生まれも育ちも京都で、地元に貢献したいという気持ちが強かったんです。地域の方と繋がりを持てる仕事ですし、京都は海外のお客様も非常に多い。地域の魅力をどんどん伝えていけるところも、私の考えにマッチしていました」

そうして株式会社リビタに入社。RAKURO 京都のスタッフとして経験を積んでいった。2021年9月にMIROKUがオープンすることになったが、コロナ禍の開業に。そんな中、佐藤さんは支配人に就任したという。

「RAKUROで3年少し働いた頃、支配人をやってみないかと声を掛けていただきました。支配人の仕事で大切だと思うのは、裏方として環境を整えるなどスタッフの魅力を引き出すことですね」

地域との共生の鍵となるのは、「宿泊客を迎えるスタッフの個性」だと語る。

「地域の魅力を伝えていく中で、スタッフ自身に魅力がないと伝えられないと思うんです。近隣のお店を回るのが好きなスタッフもいれば、お酒が好きなスタッフ、お寺を巡って御朱印を集めるのが趣味なスタッフもいます。お客様に奈良の魅力を伝える時、地域を直に見て触れて味わったスタッフだと熱がやっぱり違うんです。スタッフの個性を大事にして、地域の魅力を引き出してもらうのが私のミッションだと考えています」

ホテルから始まるディープな奈良の旅

オープン当初からコロナ禍を経験したMIROKUだが、宿泊客の満足度は高く、訪日客からの視線も熱い。

「初年度はコロナ禍だったのですが、ありがたいことに、本当にたくさんの方に来ていただくことができました。2年目は奈良県が実施していた『いまなら。キャンペーン』の恩恵もあり、海外のお客様がいらっしゃらない中でも、たくさんの方々にご利用いただけました。3年目は海外からのお客様も増え、春先は宿泊客の多くが海外からのお客様でした。世界各国の方々がMIROKUを選んでくれたことが嬉しいです」

海外の宿泊客からは、こんな頼みごともあったのだとか。

「海外のお客様は、スタッフとのフランクな会話を求めているように感じます。ホテルの外で食事をしたいということで『君が普段行くようなレストランを紹介してほしいな』と言われたことがあったんです。そこで『竹の館』という、MIROKUから歩いて15分位のおでん屋さんを紹介しました。地域に昔からあるおでん屋さんなんですよ。お客様にも『本当に美味しかった。君に聞いて良かった』と喜んでもらえました」

地域の人と同じ目線に立つことも旅ならではの楽しみ。宿泊客に紹介したいスポットは、奈良の街のあちらこちらにあるという。佐藤さんにぜひ足を運んでほしいおすすめのスポットを聞いてみた。

「2021年に中川政七商店さんの鹿猿狐(しかさるきつね)ビルヂングができました。中川政七商店さんとはコラボの宿泊プランもさせていただいています。鹿猿狐ビルヂングの1階に、すき焼きレストラン『㐂(き)つね』があります。ディナーはすき焼きのコースなどが楽しめますが、ランチの㐂つねうどんもおすすめですよ」

街にある魅力的なお店をもっとたくさんの人に知ってほしい。ライフスタイルホテルとして、地域を盛り上げることも夢のひとつだ。

「奈良はホテルが多いんですけど、高級な旅館さんやラグジュアリーなホテル、あるいはビジネスホテルが非常に多いんです。大体が宿に夕食付きなので、お客様が夜に宿から出ないことも。だから街のお店も結構早めに閉まっちゃうんです。美味しいお店があるのにもったいないと思っています。高級な宿とビジネスホテルの間に位置する、MIROKUのようなホテルはまだまだ少ない。うちみたいなホテルが増えていけば、奈良がもっと面白い街になっていくんじゃないでしょうか」

「海外の方も日本の旅行に慣れていらっしゃるので、ディープな情報を求めているようです。THE SHARE HOTELSは、“SHARING WITH LOCALS”がコンセプトですので、グループを気に入ってくださる方も多いです。MIROKUをチェックアウトした後に、KIRO 広島に向かう方もいれば、東京のKAIKA 東京やLYURO 東京清澄に向かう方も」

泊まるほど奈良が好きになるホテルを目指して

「奈良は本当に面白い街」と語る佐藤さん。ご自身も奈良で暮らしを営みながら、地域との共生について考えることも多いという。

「家を出て一歩目で野生の鹿がいますから(笑)。街中でも数歩踏み出せば雄大な景色が広がります。こういう街は世界を探してもなかなか見つけられないのではないでしょうか。この景色を残していくことが非常に大事だと思うんです」

MIROKUの支配人としてこれから、佐藤さんが力を入れていきたいことを伺った。

「奈良は観光客が多いのですが、連泊が少ないんです。奈良は日帰り、宿泊は京都や大阪という方が多いです。RAKURO 京都は長期滞在のお客様が多く、お客様とスタッフが仲良くなることもありました。奈良は1泊で帰られるお客様が多いので、その辺りは課題ですね」

「奈良公園や東大寺だけを散策するなら日帰りでもいいのかもしれないのですが、街歩きや平城京の跡地など見るところはたくさんあります。南に足を伸ばし、吉野などにもぜひ行っていただきたいです。長く滞在していただくためにも、奈良を好きになってもらう関係が作りたいです」

MIROKUは宿泊だけでなく、カフェでお茶をするなど日常使いもできる。

「地域の皆さんも、今までになかったホテルだとMIROKUに興味を持ってくれています。カフェバーのテラスは写真が映えるので、若い女性の利用も多いです。かと思えば近隣のおじいちゃん、おばあちゃんもお茶に来てくれています」

「カフェの利用がてら『今度、息子夫婦が帰ってくるから』と、予約されたお客様もいらっしゃいました。奈良はご年配の方が多い地域なのですが、10代から80代の方まで幅広くMIROKUを利用してくださっています」

肩肘張らずリラックスして過ごせるMIROKU。新しい文化を受け入れてきた奈良らしく、多様な人が自然体で空間を共有している。

「幅広い層、さまざまな国の方にご利用いただける宿というのも、他ではなかなかないホテルなのではないでしょうか。チェックイン・チェックアウトの繰り返しだけで終わってしまうのではなく、コミュニケーションができるのがライフスタイルホテルの面白さ。MIROKUを地域の方々と観光客の交流の場にできればと考えています」

MIROKUは奈良に新しい風を吹かせるライフスタイルホテル。奈良をもっとディープに楽しみたい人、雄大な自然や歴史に触れたい人は、MIROKUを拠点に奈良の東西南北を周ってみてはいかがだろう。

MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS

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